ためしてがってん ”眼瞼下垂” について |
”眼瞼下垂”という病気はその名のごとく、眼瞼(まぶた)が下垂(さがった)状態を指します。様は上まぶたが下がってくるために目が開けにくくなり、視力・視野障害を訴えられ来院される方が殆どです。
ところが、この番組では 学会ではまだコンセンサスの得られていない(様はすべての医師が支持しているわけではない、実際のところ懐疑的に観ている医師の方が多い) "眼瞼下垂の手術をすれば、頭痛や肩こり、うつ症状まで治る”という、いわゆる”松尾理論”を紹介しています。
更に問題は、これらの症状を治す目的での眼瞼下垂手術が”保険適応”であることを否定しなかったということです。実際当院でも明らかな下垂は認めていないのにも関わらず、”肩こりを治すために眼の手術をして下さい”といった類の患者は何人も来院され、説明に苦慮しました。中には”NHKで報道された医療を先生は否定するのですか?”とまで言われた方もおられました。
この放送に関する私の思いを、のま眼科の野間一列先生はブログ内で見事に代弁して下さっています。私も全くその通りだと思っています。是非番組を作られた方にも読んで頂き、意見を聞きたい。
私感ですが、、、
この番組の担当者は、”下垂のOPEをすれば頭痛や肩こり、うつまで治る”という、番組的にはオイシイ題材に飛びつき、内容に何の疑いもなく番組にしてしまったのでしょう。相手が国立大学の教授なので”まさか非難はないだろう”と思われたのでしょうが、もう少し他の医師の意見(特に眼科医)を聞こうとは思わなかったのでしょうか?
論文を書く場合、自分の主張に都合のよい文献ばかりを引用するとまず投稿しても通りません。敵対する文献を引用し、それらに対する誤りや自分の考えの方が正しいことをちゃんと説明しながら、最終的に自分の主張を客観的に肯定しうる内容に仕上げなければいけません。
”安易な報道は医療の混乱を招く” という典型的な事件であったと私は思います。
一患者さまとしての貴重なご意見を頂き有難うございます。私が手術した患者さんでも、一名だけ ”夜よく眠れるようになった” ”いらいらしなくなった” という方がいらっしゃってそちらの方で感謝されています(笑)。しかしながら、頭痛や肩こりの原因のうち”眼瞼下垂”が占める割合はかなり少ないのが現状なのです。
今回の放送ですが、耳目を集める為の”誇大表現”があったと思っています。哀しいことですが、我々医師は医学的なコンセンサスに沿って診療・治療する義務を背負っています。不透明なことを大々的に述べる方が患者様は結果的におびえると考えています。
私的にはいらいらはしていないのですが(そのように文脈が捉えられたならば反省しなければなりません)、これからも常に勉強して淡々と自分の信じる診療をしていきたいと存じます。また何かございましたら遠慮なくコメントして下さい。今回のご意見は本当に参考になりました。有難うございました。
新矢 誠人 拝