本の紹介(12) 河よりも長くゆるやかに |
”河よりも長くゆるやかに” 吉田秋生 昭和58~59年 フラワーコミック?
現在も第一線で活躍中の吉田秋生さん。少女マンガ誌連載が多いですが、その作品は少女マンガの枠をはるかに超えて、様々な世代の男女に読まれています。
この本の主人公は、福生の男子高校生。複雑な家庭環境にめげず、友人・恋愛・やばいこと(笑)、そして家族とのふれあいや関わりが、極めて淡々と描かれています。
当時この本を手に取った僕は高校三年生の5月、金座街のフタバ図書の2Fのコミックコーナーでした。”吉田秋生”なんてこれっぽっちも知らなかった僕は、表紙の絵に惹かれパラパラと立ち読みして…即購入。受験勉強中でマンガなんか買って読んでいる暇は無いはずなのに…、と当時親に見つかってこっぴどく叱られた思い出があります。
”同じ高校生、同じ男子校、なのになぜこいつらはこんなに日常を楽しんでいるのか?スゲー羨ましい!” 今振り返れば、マンガの中の話に真剣に嫉妬し、憧れを抱いていた訳で…本当に何をしていたんでしょう(笑)。
しかしながら、今でもこの本を読むたびに、高3のあの時期の、悶々とした閉塞感やぼんやりした不安、そして一貫した寂しさを思い出します。自分の生きた時代を鮮明に蘇らせてくれる一冊。
吉田さんは、この後 あの名作”BANANA FISH"を世に送り、最近では”海街dairy"がヒット中です。画風も変わらないのに色あせない、話の構成や登場人物の描き方も吉田さんらしさはちっとも変わっていない、本当に好きな作家さんです。